妊娠中に不足しやすい栄養素<ビタミン編>

 

ビタミンは体の調整に欠かせない、生物由来の栄養素です。
野菜やフルーツに多く含まれるビタミンCや豚肉や玄米に多く含まれるビタミンB1など、種類は非常に多く役目も様々です。抗酸化作用がある栄養素が多く、お母さんの老化を防ぐ効果も期待できます。

 

葉酸-サプリメントで摂取が推奨される唯一のビタミン

葉酸というのは変わった名前ですが、ホウレンソウの葉から発見されたビタミンB群の仲間です。
「妊娠したらすぐに葉酸サプリを」
と言われますが、これは何故でしょうか。
2000年に厚生労働省はサプリメントで葉酸摂取をすることが望ましいと公表しました。病院の定期検診や両親学級でも薦められた経験があるのではないでしょうか。

 

葉酸は細胞分裂に欠かせないビタミンです。葉酸はDNA合成に関わるビタミンで、特に妊娠初期の赤ちゃんが多く必要とします。赤ちゃんは受精したその瞬間から爆発的に細胞分裂を繰り返し、たった1つの細胞から60兆個になるまで細胞分裂を行います。この細胞分裂で大きな役割を果たすのが葉酸です。必須アミノ酸の一つ、メチオニンを作る手助けも行います。(アミノ酸はDNAの原料にもなります)

 

葉酸は妊娠初期に特に必要と指摘されています。妊娠初期は赤ちゃんの体の基礎ができる時期で、妊娠期間の中でも特に大事な時期とされています。この時期に葉酸が不足すると神経管がうまく作れず、神経管閉鎖障害という先天異常を起こすリスクが高まると言われています。特に日本では脊椎が塞がらない二分脊椎という症状が多く、車いす生活を余儀なくされます。
この症状が起きやすかった欧米各国では大規模な葉酸摂取キャンペーンを行い、発生率を下げることに成功しました。日本では神経管閉塞障害の発生率は欧米に比べると低いので過度に神経質になることはありませんが、妊娠1ヶ月から3ヶ月の間に1日400?をサプリメントで摂取することが望ましいとされています。妊娠1ヶ月というのは、妊娠判定日も含みます。妊娠判定を受けたその日から葉酸サプリを始めましょう。

 

葉酸が多い食品はイチゴ、ブロッコリー、柑橘類、レバーなど。特に生のイチゴには豊富な葉酸が含まれ、大きめのサイズなら数粒食べれば十分な葉酸が摂取できると言われています。生のいちごが出回る春ならぜひ積極的に食べたい食品です。

 

しかし葉酸は水溶性ビタミンで、お湯で茹でると溶け出てしまいます。しかも食品の葉酸は「葉酸の一歩手前」の状態のものが多く、消化吸収する間の代謝で変化しやすいという弱点があります。「ちゃんと食べているはずなのに葉酸不足に」なりかねない不安定なビタミンです。しかしサプリメントの葉酸は安定性があり、体で効率よく使われる作りになっています。ぜひ妊娠初期は無理せずサプリメントで補給しましょう。

 

厚生労働省は基本的に食品から栄養を摂取することが望ましいという見解です。食べるものを疎かにしてサプリで誤魔化す、というやり方は良くないものと考えています。しかし葉酸に限ってはそう言っていられない事情があります。
・十分に食べていても、食品では葉酸の補給が不安定
・葉酸不足が引き起こすリスクは赤ちゃんの人生を左右しかねない大きなもの
という事情があり、特別にサプリメントを薦めています。ぜひ自分に合うサプリメントで葉酸を補充しましょう。
妊娠初期の葉酸摂取は480?です。
ただし過剰摂取にならないように必ず容量は守りましょう。

 

ビタミンC-抗酸化作用に意外な効果も

ビタミンCといえば誰でも聞いたことがある身近なビタミンです。
果物や野菜に豊富に含まれる水溶性ビタミンで、強い抗酸化作用があります。人間は呼吸をして生きていますが、酸素は効率よくエネルギーを作り出す代わりに活性酸素という不安定な物質を生み出し、細胞を傷つけ老化させます。これは酸素を使う生き物の宿命で、私たちは呼吸するたびに老いと死を吸い込んでいるのです。この宿命に抵抗するのが「抗酸化物質」と呼ばれる存在です。ビタミンCは細胞膜を、ビタミンEは細胞の中身の酸化を和らげ、活性酸素を取り除く働きがあります。

 

酸化が進む=老化が進むのは、それだけでストレスになります。ビタミンCはそのストレスを和らげる働きもあり、妊娠中に十分に摂取すると赤ちゃんのストレスも減ると考えられます。
愛媛大学の発表では、妊娠中に野菜、りんご、柑橘類などの果物、抗酸化物質を十分に摂取して生まれた子は、そうでない子に比べて行動的問題の確率が下がるという研究を公表しました。1,199組の母子を対象にし、子供が5歳になるまで追跡調査したところ、以下の傾向がありました。
・野菜を十分に摂取し、緑黄色野菜が多い母子は低い社会行動リスクが下がる
・淡色野菜の十分な摂取は多動、低い社会行動リスクが下がる
・りんごを十分に摂取した母子は多動リスクが下がる
・柑橘類を十分に摂取した母子は情緒不安定、行動問題、多動リスクが下がる
・ビタミンCを摂取(おそらくサプリメントで摂取)した母子は行動問題、低い社会性行動、多動リスクが下がる

 

ぜひ、たっぷり野菜や果物を食べましょう。医師に相談した上でサプリメントを使ってビタミンCを補給するのも検討して良いかもしれません。野菜や果物には食物繊維も多く、腸の調子も整えてくれます。ビタミンCは水溶性なので、多すぎるぶんは尿で排出されます。とはいえ過剰摂取は様々なリスクを引き起こすので、必ず規定量は守りましょう。妊娠中のビタミンCの必要摂取量は110mg、許容上限は2,000mgです。

 

過剰摂取に気をつけたいビタミンA

ビタミンAは脂溶性ビタミンで、体内の脂肪に溶けて長く体に留まり続ける性質があります。
ビタミンAは免疫力アップや視力、皮膚を健康に保つ大事なビタミンですが、なかなか体から抜けないので過剰摂取に注意しなといけません。ビタミンAの過剰摂取は赤ちゃんの生育に悪影響を与える可能性があります。ビタミンAが多い食品は豚レバー、鶏レバー、アンコウの肝、鮎の肝、ヤツメウナギ、うなぎの肝など。美味しい食材ばかりですが、過剰摂取は控えて週に一度以下を心がけましょう。

 

人参などに含まれるβカロテンは、ビタミンAの前駆体(一歩手前の状態)です。必要なだけビタミンAに変化し、あとは使われない性質があるので安心して摂取できます。緑黄色野菜は健康にも良いので、十分に摂取したい食材です。

 

妊娠中に不足しがちなビタミンと、過剰摂取に気を付けたいビタミンをご紹介しました。バランス良く食べて摂取し、足りないものはサプリメントで補うことが大事です。

 

 

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