妊娠中に不足しやすい栄養素<たんぱく質編>

 

タンパク質は身体を構成する大事な原料です。
三大栄養素の一つに挙げられるほど重要な栄養素ですが、意外と日本の女性は不足しがちな傾向があります。朝はおにぎり、昼は蕎麦やうどん、という食生活は珍しくありませんが、このような食事は炭水化物ばかりでタンパク質が不足する傾向があります。二人分の身体を作る妊婦さんは、タンパク質も意識して摂取しましょう。

 

タンパク質は身体の基礎とインフラを作る栄養素

タンパク質は人体を作り上げ、維持するために欠かせない、もっとも大事な栄養素の一つです。
動物の肉体は水分とタンパク質の固まりと言っても過言ではありません。タンパク質は20種類のアミノ酸によって作られています。20種類のブロックのピースを繋ぎ合わせ、夥しい種類のタンパク質が合成される姿はレゴブロックに似ています。

 

タンパク質は消化する課程でアミノ酸までバラバラになり、小腸から吸収されます。もし消化不良でアミノ酸までバラバラにできないと、体内に取り込むことはできません。

 

吸収されたアミノ酸は血流に乗って肝臓に運ばれ、再び人体に必要な形に組み立てます。組み立てられるタンパク質は数万種類もあり、様々な用途に使われます。
・肉体を作る
・血やリンパ液の原料
・ホルモンや酵素になり、体内のバランスを整える
など多くの役目があります。

 

体内でもタンパク質は分解と合成を繰り返し、最後は酸化してエネルギーとして燃やしてエネルギーに変え、尿素として体外に排出されます。タンパク質は放っておけばどんどん減っていくので、食事で補うことが求められます。

 

タンパク質は複数の食材から摂取しよう!

タンパク質の最小単位、アミノ酸は20種類あります。
実は人体でもアミノ酸を合成することができます。しかし20種類のうち8種類だけは人体で合成することができません。この8種類は食事やサプリメントなどの形で外から取り込むしか補充できません。この8種類を「必須アミノ酸」といい、タンパク質の中でも特に重要です。

 

タンパク質を含む食品でも特に重視したいのは、この必須アミノ酸がバランスよく配合された食材です。このバランスは「アミノ酸スコア」という数値で表し、100に近ければ近いほどバランスが良いと考えます。
たとえばパンや白米はリジンというアミノ酸が極端に少なく、アミノ酸スコアが低い食品です。卵は一番少ないアミノ酸のヒスチジンが100あるので、アミノ酸スコアは100です。
・大豆
・鶏肉
・牛肉
・豚肉
・牛乳
・鰺(アジ)
・鰯(いわし)
・鮭
・マグロ
など、アミノ酸スコア100の食材を無理のない範囲で食事に取り入れましょう。

 

しかしパンも白米もリジン意外の必須アミノ酸は100以上あります。リジンが多い食材と組み合わせることで、バランスよく必須アミノ酸=タンパク質を摂取することができます。リジンが多い食材はイワシ、ほたて貝、大豆製品、卵、鶏肉、豚肉や豚ゼラチン、チーズなどがあります。パンにチーズを乗せて焼くだけでも、アミノ酸スコアは100に近づきます。「複数の食材からタンパク質を摂取する」ことが大事なのは、このためです。

 

タンパク質は1日の食事カロリーのうち13〜20%ほどを占めると良いと言われます。妊娠中に必要なタンパク質は1日70gです。1品多めにアミノ酸スコアの高い食材を増やすと良いでしょう。動物性、植物性タンパク質をバランス良く食べることをお勧めします。

 

これは避けて!妊娠中に食べない方が良いタンパク質は?

肉や魚、チーズは良質なタンパク質が詰まっています。しかし「生」の食材には気をつけないといけません。以下の食材は食べないようにしましょう。
・欧州産の生チーズ
・欧州産の生ハム
・欧州産のスモークサーモン
・生肉、加熱が不十分な肉(ローストビーフ含む)
これらの食材は加熱していないため(スモークサーモンは「冷燻」という低い温度で燻して作ります)、赤ちゃんの成長を邪魔する危険なバクテリアが混じっています。日本でも被害が出ているので、妊娠中にそのまま食べるのは我慢しましょう。
ローストビーフは中身が赤いですが、一定の温度で加熱殺菌しています。理論上は問題なさそうですが、実際は加熱不足で内部まで殺菌できていないおそれがあります。「客観的なデータを見て、少しでもリスクのあるものは避ける」ことが赤ちゃんを守る基本です。

 

これらの食材も加熱すればバクテリアが死滅するので、妊娠中でも安心して食べることが出来ます。ステーキなどは内部までしっかり火を通したウェルダンがおすすめです。日本で広く流通しているプロセスチーズは加熱処理しているので、そのままでも安心して食べられます。

 

どうしても肉が食べづらい・・・プロテイン摂取はアリ?

最近は日本の薬局でもプロテインをよく見かけるようになりました。
プロテインはタンパク質を効率よく摂取できる加工食品で、タンパク質のサプリメントと呼んでも良いでしょう。中身は大豆や乳清です。

 

食事があまり食べられないからプロテインで補う、というのも一つの対処法です。しかしプロテインは「栄養補助食品」であることを忘れてはいけません。
まずは出来る範囲で食事を整え、それでも足りない場合はプロテインの助けを借りる、という順序は必ず守りましょう。プロテインは食品ですが念のため、必ず医師に相談してから摂取して下さい。

 

 

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