妊娠中に不足しやすい栄養素<食物繊維編>

 

食物繊維人間とは消化できない成分の総称です。一般的には野菜の細胞壁やある種のデンプン、エビやカニ類のカラなどをまとめて「食物繊維」と呼びます。
食物繊維が「腸の掃除に良い」ことは伝統的に知られていましたが、ひと昔前はカロリーにもならない無用の長物と考えられていました。近年の研究で便秘改善、腸の働きを整えるだけでなく血糖値の急激な上昇を抑え、満腹感を維持させる効果も明らかになりました。現在では「第六の栄養素」と言われ、ビタミンやミネラルと同様に積極的に摂取すべきものと指導されています。

 

食物繊維は妊娠トラブルを緩和する?

妊娠中にはホルモンバランスが変わり、お母さんの体内は急激に変化します。その変化に耐えられずに病気を引き起こすことも珍しくありません。
産婦人科の先生に「体重管理を」と何度も言われたこともある方もいるでしょう。その理由は様々ですが、急激に体重が増えると「妊娠糖尿病」を誘発するリスクが上がるからです。

 

妊娠糖尿病とは妊娠中だけ発症する糖尿病で、出産すれば多くのケースで改善します。妊娠中は使える薬が限られるため、出産まで厳しい食事管理とインスリン注射で対処するしかありません。糖尿病の管理は血糖値コントロールが重要です。しかし妊娠糖尿病は血糖値コントロールが普通の糖尿病の方よりも難しく、早産や出産トラブルなどのリスクを跳ね上げます。赤ちゃんの発育にも悪影響を与えるので産婦人科の先生が厳しく言うのも納得です。食物繊維はこの妊娠糖尿病リスクを下げ、血糖値コントロールの助けになります。しかもカロリーフリーで食べ過ぎても太りません。お母さんの健康を支える大事な栄養素です。

 

食物繊維には2種類ある!それぞれの働きは?

食物繊維は水に溶けるもの、溶けないものの2種類があります。それぞれ性質が異なり、どちらも重要な働きがあります。

 

水溶性食物繊維

里芋などのネバネバ成分を指します。水と溶け合い、消化器官をゆっくり巡りながら排出されます。粘りのないサラサラした食物繊維もあります。こんにゃく、昆布、わかめ、里芋、大麦、オートミール(オーツ麦)、果物などに豊富に含まれています。体内ではゼリー状になり、胃腸内でバリアーのような役目をします。糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。コレステロールなど肥満の元を吸い取りながら排出する作用もあります。急激な肥満を防ぐ効果が高い栄養素です。(※食満繊維を摂っても過剰にカロリー摂取をすれば太ります)

 

不水溶性食物繊維

ザラつく食感の、あまり心地よくないタイプの食物繊維です。水を吸って膨らむ習性があり、飢餓感を減らします。腸を刺激して動かす作用もあり、便通を改善します。食感が良くないので、しっかり噛んで食べないといけません。この「噛む」ことが大事で、消化酵素アミラーゼ分泌を促し、顎が鍛えられて意識がハッキリする、歯を頑丈にするなど様々な良い効果があります。

 

「これは繊維だ」と感覚的に理解しやすい食物繊維です。
ゴボウなど根菜類、穀物の外皮(ブランなど)、きのこ、果物、わかめなど海草類、エビ、カニの殻などに含まれます。特に干した野菜や海藻(海苔など)に豊富に含まれています。野菜の皮にも多く、大根やレンコンの皮を剥かずに調理すれば効率よく食物繊維が摂取できます。調理の手間が省けて調理も楽になります。(古くなった野菜やタマネギの皮、痛んでいる場所は取り除いて下さい)

 

どちらの食物繊維も、大腸に入るとビフィズス菌など乳酸菌などのエサになります。水溶性食物繊維のほうがよりエサになりやすいですが不水溶性でも同じ効果があります。乳酸菌は人体に悪さをしません。しかも乳酸を出して周囲の他の細菌(大腸菌など人体に悪さをする菌も含めて)を排除します。乳酸菌が適度に繁栄する大腸は健康で、スムーズな便通を促します。人間では消化できない食物繊維も、乳酸菌にとってはご馳走です。便秘解消で乳酸菌サプリやヨーグルトを食べるのも良いですが、「エサをあげて育てる」ことも忘れないようにしましょう。

 

成人女性(18〜69歳)の食物繊維の目標は18g以上です。普段の食事できちんとクリアするのは意外と大変で、特に妊婦さんの世代は摂取量が不足しがちです。(平均11.8〜12.5g)

 

普段の食事の改善に加え、食物製ファイバーの摂取も

食物繊維のサプリメントは多数あります。イージーファイバーのように粉になったものが多く、「難消化性デキストリン」「イヌリン」「キトサン」「○○ファイバー」「食物繊維」などの名で販売されています。粉状の食物繊維はドリンク類や味噌汁などに加えて使うと手軽に摂取できます。加熱するとすぐに溶けますが、加熱が不十分だとダマになって食感が悪くなります。食物繊維は食前に摂ると血糖値の急上昇を穏やかにします。

 

注意点は、必ずたっぷりの水やお湯とともに飲みましょう。食物繊維がお腹で膨れて効果が上がります。
過剰摂取は消化器官に負担をかけすぎて、かえって便秘が悪化することもあります。規定量は必ず守り、少しずつ様子を見ながら摂取しましょう。妊娠中は赤ちゃんを守るために排出力が下がります。腸の動きも鈍くなるので、ある程度の便秘は仕方ありません。食物繊維の刺激が強すぎると健康を損ねるおそれがあるので、無理をせず程々の量を心がけましょう。

 

 

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