妊娠中に注意するべき栄養素<ビタミンA編>

 

妊活中、妊娠初期から中期を過ぎるまで、特に気をつけて摂取していく必要のある栄養素があります。それはビタミンAです。ビタミンAは健康な体を作る上で欠かせない栄養素のひとつです。たくさんあるビタミンの中でビタミンAはどんな働きをして、なぜ気をつけていかなければならないのでしょうか。

 

ビタミンについて

ビタミンは、活動エネルギーや、体を直接作る成分ではありません。健康な体を維持、作るうえで、重要な、欠かせない、働きをする栄養素です。脂溶性ビタミン、水溶性ビタミンに大きく分けられます。

 

脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミンは、水に溶けにくく、油に溶けやすいビタミンの総称です。
ビタミンAも脂溶性ビタミンです。水洗い、加熱調理で栄養価が失われにくく、脂質と一緒に調理すると吸収率がよくなります。過剰に摂取すると水溶性ビタミンのように尿中に排泄されないので体内に蓄積することで有害に作用することもありますビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが主な脂溶性ビタミンです。

 

水溶性ビタミン

水溶性ビタミンとは文字通り水に溶けやすいビタミン類の総称です。
水洗い、加熱調理の際に栄養価が失われやすく、過剰に摂取しても尿中に排出されます。ビタミンC(L-アスコルビン酸)、ビタミンB群―ビタミンB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6、B7(ビオチン)、B9(葉酸)B12(シアノコバラミン)が主な水溶性ビタミンです。

 

ビタミンA

ビタミンAはレチノール、レチナール、レチノイン酸の総称です。
レバー、うなぎに非常に多く含まれています。動物性のビタミンAは過剰にとりすぎると過剰症を引き起こします。いっぽうで、β‐カロチン等のカロチノイド群はニンジン、カボチャなど緑黄色野菜の中に多く含まれビタミンAの前駆体として、プロビタミンAと呼ばれています。特にβ‐カロチンは体内でのレチノールへの変換がほかのカロチノイドに比べ効率が良いとされています。β‐カロチンは体内で必要とされる分だけレチノール:ビタミンAに変換されます。必要としない分のβ‐カロチンは主に脂肪細胞に貯蔵されるか、排泄されます。そのためプロビタミンAから摂取した場合、過剰症の心配はありません。

 

ビタミンAの働き

ビタミンAの主な成分であるレチノールは、眼や皮膚の粘膜を健康に保ち、ウイルス等による、感染症に対し抵抗力を強める働きがあります。明るいところから薄暗いところに入ると徐々に見える、暗順応という薄暗いところで視力を保つ働きがあります。その暗順応に関与する、ロドプシンという物質の合成にも必要な栄養素です。レチノールは上皮細胞でのがんの抑制に働くといわれています。ビタミンAは健康維持に大切な役割をする栄養素であることがわかります。

 

ビタミンAが不足すると

ビタミンAが不足すると暗順応という薄暗いところで徐々に見えてくる視細胞のはたきがうまくいかなくなり夜盲症になります。角膜や結膜上皮が乾燥して角質化し視力障害から最悪の場合失明します。感染症に対する抵抗力の低下をきたします。

 

ビタミンAを過剰に摂取すると

レチノールを多く含む食品を過剰に摂取するとビタミンAの過剰症をおこします。
急性の症状として頭蓋内圧が高くなり、脳が圧迫されることにより、頭痛、吐き気、嘔吐、めまいが出現し、過敏症が出現した後、全身の皮膚の表皮が脱落(落屑)します。慢性の症状として全身の関節痛、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、体重減少、肝脾腫、脳圧亢進による頭痛、眼底にはうっ血乳頭を認めます。

 

妊娠中のビタミンA過剰摂取

妊娠の可能性のある女性と、妊娠中の女性が動物性のビタミンAを過剰摂取すると赤ちゃんが奇形をもって生まれてくるという恐れがあります。ビタミンAは、健康維持に必要です。全くとらないでいることは赤ちゃんにも、お母さんにもよくないことです。過不足なく摂取することが大切です。

 

緑黄色野菜に含まれる:プロビタミンAなら安心

 

動物性のビタミンAレチノールを含む食品

動物性のビタミンAを含む食品は非常に高い含有率のものが多く、100g摂取しただけでも簡単に一日の摂取上限量を超えてしまいます。

 

ビタミンA食事摂取基準(?RE/日)女性 
(厚生労働省日本人の食事摂取基準2015より抜粋引用)

年齢 推定平均必要量 推奨量 目安量 上限量(※1)
18〜29歳 400 650 2700
30〜49歳 500 700 2700

妊婦・付加量

初期

中期

後期

+0
+0
+60

+0
+0
+80

 

 

授乳婦・付加量 +300 +450

※1プロビタミンA:カロチノイドを含まない量です。

 

食品のビタミンAレチノール含有量を確認します。
摂取量に注意が必要な、レチノール:ビタミンAが多い食品(100g中の量を示します)
鶏レバー(生)14,000?
豚レバー(生)1,300?
牛レバー(生)1,100?
やつめうなぎ(生)8,200?
ホタルイカ(ゆで)1,900?
ぎんだら(生)1,100?
サンマ(焼き)13?
鶏卵全卵(ゆで)140?
プロセスチーズ260?
普通牛乳38?
レバー、うなぎは毎日食べることは避けます。推奨量、付加量を確認して、食事に取り入れます。

 

プロビタミンA、カロチノイド群を多く含む食品

β‐カロチン等:プロビタミンAが多く含まれる食品。β‐カロチンは他のカロチノイドに比べて体内でレチノールへの変換の効率が良いとされています。
β‐カロチン等からのプロビタミンA摂取は体内に蓄積されず、過剰症の心配がありません。食品のβ‐カロチン当量、レチノール相当量(100g中の量を示します)

 

食品名 β‐カロチン当量 レチノール相当量
にんじん・皮むき・ゆで 8,600μg 750μg
ほうれんそう・葉・ゆで 5,400μg 450μg
しゅんぎく・葉・ゆで 5,300μg 440μg
ニンジンジュース 4,500μg 370μg
西洋かぼちゃ・ゆで 4,000μg 330μg
こまつな・葉・ゆで 3,100μg 260μg
トマト・生 540μg 45μg

 

たとえば焼きのりも100g中のプロビタミンAが25000?と高含有です。焼きのり1枚は約3gです。
25000÷33.3で750?のβ‐カロチンが摂取できます。レチノール相当量として約62.5?くらいでしょうか。焼きのりは手軽に食事に取り入れることができます。
いろいろな食品からプロビタミンAを摂取することは、他のビタミン・ミネラル類、食物繊維の摂取にもつながります。野菜からプロビタミンAをとると、食事の栄養バランスをはかることができます。
β‐カロチン等のプロビタミンAを多く含む食品を上手に組み合わせて過不足なくビタミンAをとりましょう。

 

 

page top